近年、食品ロスや子どもの貧困に関する問題が深刻化しています。日本では、約9人に1人の子供が相対的貧困状態にあり、特に一人親家庭では、2人に1人がこの状況にあります。一方で、毎年500万トン以上の食品が廃棄される実態もあり、個々人が毎日実に「おにぎり1個分」を無駄にしている計算になります。
そんな中、ネッスー株式会社が運営する「こどもふるさと便」が注目を集めています。このプロジェクトは、ふるさと納税を活用し、地域の生産者や漁協、農協、食品メーカーと協力して、こども食堂や子育て世帯に食料を届ける新しいフードバンクとして機能しています。この取り組みは、子どもたちの機会格差の是正と同時に、食品ロスの削減をテンポよく進めることを目指しています。
「こどもふるさと便」の最大のホールドアウトは、寄附者が地域の特産品を受け取ることで、「損がない社会貢献」を実現している点です。この制度により、寄附者は地域の特産物を受け取る一方で、その返礼品の一部が直接こどもたちに届けられます。また、規格外の野菜や未利用の魚や食品を使った「応援品」を配合することで、食品ロスの削減にも寄与しています。
2022年に神奈川県三浦市での実証実験を皮切りに、これまでに約90トンの支援を実現してきたとのこと。現在、全国約30の自治体と連携を進めており、2026年度にはさらに10地域にまで拡大することを計画しています。これにより、年間1,000トン以上の食品ロス削減と子どもの支援が同時に実現できることを目指しています。
具体的な事例として、長崎県対馬市のプロジェクトにも注目したいです。この地域は全国でも最大級の漁業生産量を誇りますが、同時に市場に流通しない未利用魚の問題を抱えています。対馬市では未利用魚を「食べる」ことで食品廃棄物削減や藻場再生プロジェクトを行っており、これをこどもたちの食育に活用しています。子ども食堂にも新たな栄養源として提供されています。
さらに、2025年10月14日には、寄附者が応援品の届け先を選べる専用のポータルサイトを開設予定です。これにより、より具体的に寄附者が支援を行いたい対象を選ぶことが可能になるため、効果的な支援の拡大が期待されます。
今回の「こどもふるさと便」は、食品ロス削減推進表彰において消費者庁長官賞を受賞しました。このことは、食品ロス削減と子ども支援を同時に進める新しいモデルとして、高く評価された証です。今後もこの活動が広がり、さらに多くの地域で支援が行われることを期待しています。
代表取締役の木戸優起氏は、受賞について「この取り組みが評価していただけて大変光栄です。地域の食品や体験を通じて、多くの方にこどもたちの支援の輪を広げていきたい」と語っています。ネッスーとして、今後も地域との連携を強め、食品ロス削減に向けた取り組みを加速させていく意向を示しています。