和歌山県が掲げる新たな林業戦略とその挑戦
和歌山県は2017年度に「森林・林業総合戦略」を策定し、前期5年間において素材生産量の増加に力を入れた取り組みを行ってきました。その結果、同戦略の主要目標を達成したものの、県内の製材需要に応じられない状況が浮き彫りになっています。さらに、森林業に従事する人々の高齢化や担い手不足の問題も深刻です。
このような現状を受けて、和歌山県では2022年4月に「和歌山県 森林・林業“新”総合戦略」を新たに策定し、これからの5年間で必要な取り組みを示しました。新戦略は、素材生産量はもちろん、林業の収益改善にも焦点が当てられています。具体的には、素材の生産、流通、加工・販売といった各分野における取り組みが強化されます。
基本方針
この新しい戦略では、以下の基本方針が掲げられています。
1.
スマート林業の推進: 新技術の導入(ICTなど)を通じて、効率的かつ持続可能な林業を実現。
2.
担い手の確保育成: 新規就業者を増やし、林業に関する教育プログラムを充実。
3.
森林の適切な管理: 環境に配慮した森林管理を行い、持続的な木材産業を支える。
素材生産体制の強化
新戦略の一環として、素材生産体制の強化が図られています。具体的には、以下のような取り組みが進められています。
- - 森林クラウドシステムの整備によるデータ管理の効率化。
- - 林道や作業道の整備を通じたアクセス改善。
- - 伐採から植栽までのプロセスを一貫して行うシステムの構築。
素材流通体制の強化
素材の流通に関しても、新たな取り組みが行われています。
- - ICTを活用した需要別原木の判別システムの構築。
- - 原木の強度表示を通じて、付加価値を引き上げる努力がされています。
紀州材加工販売体制の強化
紀州材に特化した加工販売体制の整備も進めています。
- - 加工事業者の生産力向上を目指す取り組み。
- - 販売力を強化するための支援体制の構築。
紀州材利用の拡大
また、紀州材の利用を促進するため、以下の施策が計画されています。
- - 建築物における木造化の推進。
- - 土木工事での木材利用を促進する仕組み。
林業担い手の確保・育成
林業の担い手を支援するためには、新規就業者の確保が欠かせません。和歌山県農林大学校などでの研修を通じて、新たな人材が育成されることを目指しています。また、事業体の経営体質を強化し、労働安全管理能力の向上にも努めています。
適切な森林の管理
新戦略の中で、適切な森林管理は重要な要素です。「新紀州御留林」を通じて貴重な森林が公有林化され、花粉の少ない森林づくりや、違法伐採の監視が強化されることが期待されています。さらに、市町村による私有森林の整備促進も拡充されることで、効果的な管理が実現されるでしょう。
これらの取り組みを通じて、和歌山県は持続可能で活気ある林業を築き上げ、地域の経済発展にも寄与していく方針です。他地域との連携を強化し、林業の未来を切り拓くことが求められています。森林・林業の新たな挑戦に、今後も注目が集まるでしょう。