世界初の3Dプリンター駅舎、JR初島駅が完成
和歌山県有田市にあるJR紀勢本線の初島駅に、世界初の3Dプリンター技術を駆使した駅舎が完成しました。これまでの駅舎建設の常識を覆すこの新しい駅舎の工法は、近年のテクノロジーの進化を象徴する一つの例といえるでしょう。このプロジェクトは、セレンディクス株式会社がJR西日本グループと共同で手掛け、駅舎の建設が2023年3月26日に完了したことを発表しました。新駅舎は2025年7月の供用開始を目指しており、今後は外構工事や改札機の設置工事等が行われる予定です。
駅舎建設の背景
現在の初島駅は1948年に建設された木造の駅舎であり、老朽化が進んでいました。無人駅となった現在、この駅舎の維持管理はコスト負担が大きく、効率化が求められる状況に置かれています。このため、新しい駅舎の必要性が高まっていたのです。一般的な駅舎の建設では、列車が通らない夜間に工事を進めるため、工期が長期化することが多く、通常の鉄筋コンクリート駅舎の建設には1〜2ヶ月がかかります。
しかし、セレンディクスは3Dプリンタ技術を活用し、その工期を大幅に短縮することを目指しました。実際には、駅舎の躯体工事を最終列車から始発までのわずか6時間で完了させるという壮大な目標を掲げ、関係者の多くがこれを難しいと感じていましたが、同社は過去に実績を積んでおり、その挑戦を続けました。
3Dプリンターの技術
今回の駅舎の部材は熊本県水俣市にある立尾電設株式会社で製造され、特別に設計された3Dプリンターを使用し、特殊なモルタルをノズルから吐出してパーツを出力しました。このプロセスにおいては、追加で内部に鉄筋とコンクリートを流し込むことで強度を確保しました。製造には7日間を要し、最終的に4つのパーツが完成し、トラックで現地に輸送されたのです。
工事の実施
3Dプリンターを使用した工事は25日午後11時57分の最終列車出発後にスタートしました。駅前ロータリーにトラックが入り、クレーンによって部材を設置する作業が行われました。スムーズに進行し、約2時間で組み上げが完了。最終的に午前5時には作業が終了し、全てが時間通りに進行したことに関係者は安堵した様子でした。JR西日本による技術的な確認が行われ、その後必要な軽微な補修も施される予定です。
今後の展望
この新しい駅舎は、JR西日本によって内装や改札機設置のための工事が続けられ、供用開始が予定されています。セレンディクスはさらに駅舎建設における工期短縮や、建設・維持管理コストの削減効果を検証していく意向を示しており、他の鉄道施設への技術応用も視野に入れています。接続する地域の魅力を向上させる役割も果たすことが期待されています。
関係者のコメント
セレンディクスの共同創業者である飯田國大氏は、今回のプロジェクトが「新たな挑戦」であるとし、オープンイノベーションを通じてさまざまな協力会社の助けによって実現できたと述べています。日本の建設業界における労働力不足に対応するためには、3Dプリンターを利用した効率的な建設法の普及が重要であるとも強調しています。今後もセレンディクスは、さまざまなプロジェクトを通じて3Dプリンターによる新しい建設の形を提示していくことでしょう。